• Established 1984. Multilingual Communication Service Company

Vol.9-1 ビバ・エスパーニャ!―前編―

Vol.9-1 ビバ・エスパーニャ!―前編―

2020/10/16

 ¡Hola!(オラ!)こんにちは。さて、今回のテーマは、スペイン人がこよなく愛するフィエスタ(Fiesta:祭事・パーティー)についてです。お祭り好きのスペインには数えきれないほどのフィエスタが存在しますが、その中でも「これぞ、スペイン!」と思わせるような、スペインならではのものをご紹介します。あなたもきっと、「ビバ・エスパーニャ!(¡Viva España!:スペイン、最高!)」と叫びたくなるはず。

ラ・トマティーナ(La Tomatina)

トマティーナ

 数多あるスペインのお祭りの中でも、「トマティーナ(トマト祭り)」というお祭りを耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。このトマティーナは、アリカンテからほど近い、郊外の小さな村ブニョール(Buñol)で毎年開催される有名なお祭りです。その人気ぶりはすさまじく、国内外から5万人もの観光客が押し寄せるほどだとか。では一体何をするお祭りなのでしょうか。

 簡潔に言うと、トマトでする雪合戦、つまりただトマトを投げつけ合うというシンプルなお祭りです。その起源は1940年代、青果店の列に並んでいた若者同士の喧嘩で、どちらかがトマトを投げつけたのが始まりと言われています。以来、8月の最終水曜日はトマトの日とされ、毎年このトマティーナが開催されています。そのあまりの危険さに、一度禁止されたことがあるそうですが、ブニョールの住民たちが大反発したため、ルールを定めたうえで復活させたそうです。

 このお祭りでは最初に「パロ・ハボン(Palo jabón:石鹸棒)」という開始の号令があります。石鹸を塗りつけた長い1本の棒の先端に、生ハムをくくりつけ、それを誰かがもぎ取った瞬間にトマト祭りが始まります。ちなみに、生ハムを取った人はお祭りの間英雄としてもてはやされるそうです。
 生ハムにトマト……かなり美味しそうなお祭りですが、食用のものを使うわけではありません。トマティーナで使われるトマトは開催委員会が用意した、もう使えなくなってドロドロに熟したトマトで、開催の2週間ほど前から、スペイン各地のスーパーや青果店で売れ残ってしまったものを集めて再利用しています。100トン以上を1日で消費する、一見フードロス極まりない行事も、実はエコに配慮して行われているのです。
 たった1時間程度で終了するトマト合戦ですが、小さな街はあっという間に血の海ならぬ、トマトの海と化します。開始とともにトラックから運ばれるそのトマトの量は尋常ではなく、道は泳げてしまうほど。参加する際には水着とゴーグルは必須、身に着けるものはすべて終了後に捨ててもいいものにしましょう。また、写真や動画に収めたい気持ちを抑えて、ただトマトを投げることに集中することをおすすめします(スマホ類が壊れてしまったり、撮っている間にトマトを投げつけられたりするので……)。
 私は参加したことはありませんが、実際に参加した友人曰く、「身体中の穴という穴にトマトが入り、2~3日、においが取れずめちゃくちゃかゆい」のだそう。参加するにはかなりの覚悟が必要そうですが、間違いなく忘れられない思い出になることでしょう!

ロス・レジェス・デ・マゴス(Los Reyes de Magos)

プエルタ・デル・ソル
ライトアップされるクリスマスツリー
[太陽の門(プエルタ・デル・ソル)、マドリード:Puelta del sol, Madrid]

 次にご紹介するのは、スペインのクリスマス(ナビダッド:Navidad)です。スペインのクリスマスは長く、12月25日から1月6日までが期間です。
 クリスマスというのはもともとスペインの行事ではなく、キリスト教の祝日なので、昔は今のようにパーティー等で祝うことはなかったそうです。しかしスペインでは、その昔に東方よりラクダにまたがった3人の賢者が、子供たちにプレゼントを配ったという逸話があり、それがクリスマスと合体して今の形になったのだとか。
 つまり、私たちにも馴染みのあるクリスマスに加え、スペインには独自のクリスマスがもうひとつある、ということです。なんと、スペインの子供たちはクリスマスプレゼントを2度もらうことができるのです……!
 ロス・レジェスの日は1月5日と6日です。したがって、6日の朝に二度目のクリスマスプレゼントがツリーの下に届きます。スペインの子供たちにとってはこちらのプレゼントのほうが本命だそうです。すごく羨ましい話だな……、と初めて聞いた時に感じました。前日の5日には、スペイン各地で三賢者に扮したパレードが行われ、盛大に祝われます。

 そしてこの2日間に食べられる有名なお菓子があります。「ロスコン(Roscón)」といって、大きなドーナツ型のパイ生地にクリームや砂糖漬けのフルーツが挟まっている、とっても甘いお菓子です。
 ロスコンは、ただ食べるのではなく、ゲームをしながら食べます。このお菓子のどこかに指輪や王冠などの小さなおもちゃがはいっており、切り分けて食べた時にそのおもちゃに当たった人は、その一年幸せに暮らせるというゲームです。
 この時期になるとスペイン中のケーキ屋さんやパン屋さんで売っているので、ぜひ年男・年女になるべく、ご家族やご友人とチャレンジしてみてください。

ロスコン・デ・レジェス
ロスコン・デ・レジェス(Roscón de Reyes)

 後編では、スペイン三大祭りのうちの一つ、危険ですが神聖な命のお祭り「サン・フェルミン(San Fermín:牛追い祭り)」についてご紹介します。どうぞお楽しみに!

ライター:NANA

東京都八丈島出身。趣味は読書とお散歩で、旅行雑誌を読んで行った気分になるのが好き。スペインの好きなところは、一瞬一瞬を楽しむことに全力を注ぐスペイン人の生き方と、美味しい食べ物。スペインのアリカンテ大学(バレンシア州)への留学体験記を執筆中の、フラメンコを踊れるライター。

←前の記事へ  次の記事へ→

観光、文化に関する和文・英文ライティング(記事執筆)、多言語翻訳を随時受け付けております。
お問い合わせはこちら

※当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。