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Vol.3-2 アリカンテ大学―後編―

Vol.3-2 アリカンテ大学―後編―

2019/11/22


教室棟前の噴水広場

アリカンテ大学を選んだ理由

 日本人留学生のほとんどは自分が所属している大学か、留学代行業者を通して留学手続きを行うかと思います。しかしアリカンテ大学の場合は学生と、大学側のコーディネーターが直接やり取りできるのです。そのため、よりスムーズに手続きを進められた実感があります。

 アリカンテ大学の留学生向けスペイン語コースでは、コーディネーターとして日本人スタッフ※1が日本人学生のサポートをしてくれます。私自身、留学を申し込む際には、コーディネーターに大変お世話になりました。自分が受講したいコースの申請だけでなく、ビザ申請の手伝いやステイ先の手配、また長期間(6ヶ月以上)スペインに滞在する場合には必要となるニエ※2(NIE)の申請などもサポートしてくれます。スペイン留学のしくみはやや複雑なので、言葉がまだままならなかった私にとって、日本人スタッフの存在は大学を選ぶ際の大きな決め手でした。

 私の場合は、留学先を決めた時期が遅かったので、ビザ申請やその他の手続きがギリギリになってしまいましたが、コーディネーターのサポートのおかげで、無事期限内に手続きを終えることができ安心しました。留学中も、分からないことがあれば気軽に相談に乗ってもらえます。何より「もしもの時に頼れる日本人の大人がいる」という安心感は、新しい土地で生活に不安を抱える留学生にとっては大きな助けになるのではないでしょうか。


語学教育センター(CSI: Centro Superior Idiomas)

留学生向けスペイン語コースについて

 アリカンテ大学のスペイン語コースはレベルに応じて12段階ものクラスに分かれており、自分の語学力に合わせて学ぶことができます。コース開始月は固定ではなく、何月からでも受講を開始できます。そのため、自身の都合に合わせた柔軟な留学プランを立てやすいです。毎月末にレベルアップのための試験があり、合格できれば翌月から一段階上のクラスを受講できるシステムになっています。

 私の感じた大学付属の語学学校に通うメリットは、コースカリキュラムが綿密に組まれていることと、教師歴の長い質の高い先生が揃っていることです。教師陣は女性が多く、まさに日本人が想像する「ザ・スペイン人」のような情熱的でパワフルな先生ばかりです。常にジェスチャーが大げさでジョークを欠かさない、楽しい先生たちが私は大好きです。

 私立の語学学校では、幅広い年齢層の先生がいることや、短期留学者に向け凝縮されたカリキュラムが組まれるのが特徴です。一方、アリカンテ大学の留学生向け語学コースでは、大学が主体となってカリキュラムを精査・監修しています。そのため、選ばれたベテランの先生が基礎レベルから発展レベルまでしっかり時間をかけて教えてくれます。また通常の語学コースに加え、特定の分野(会話、文化、観光、ビジネス、映画など)を通して、それぞれ異なる面から楽しみつつスペイン語理解をより深めることが出来る選択コース、DELE2対策コースなど様々なオプションが存在します。例えば私の場合は一日に3時間の語学コース、その後1時間の選択コースを受講しています。選択コースは毎月スケジュールに沿っていくつかが開講されるので、その都度レベルの範囲内で好きなものを選ぶことが出来ます。


いつも多くの生徒で賑わう大学内のメイン通り

「現地の大学に通う」ということ

 語学留学におけるクラスはほとんどがスペイン語を母国語としない非ネイティブの学生で構成されます。そのため、私立の語学学校では、他国から留学に来ている友達はできても、現地の学生との交流の機会がなかなか無いようです。対して、アリカンテ大学のスペイン語コースの授業は大学構内で行われるため、自分たちの教室の隣で現地の学部生が通常授業を受けています。大学構内で勉強できる、という点は私にとって大きな魅力でした。図書館に、ジム、カフェテリアなど、授業外で現地の学生と同じ空間を共有出来るので、出会いの場所はそこら中に。休み時間などに外に出ると、学部生たちが中庭で寝転んでいたり、おしゃべりしていたり……。声が大きく、話し好きの彼らの会話に耳を澄ませば、ネイティブの発音や日常表現を聞く良いリスニングの練習になります。現地の友達を作りたければ、勇気を出して話しかけてみてください。たまに学内で開催されるインテルカンビオ(Intercambio:語学交換会)に参加すれば、日本に興味のある現地学生との交流も可能です。私はこちらのアクティビティで、たくさんのスペイン人の友人を作ることが出来ました!自分の殻を少し破って、積極的に行動したおかげで、教室の外でスペイン語を聞く機会が格段に増えました!


毎朝生徒と一緒の道を歩く猫(実は全猫に名前がついています!)

魅力的で豊富な大学アクティビティ

 アリカンテ大学のスペイン語コース等を管轄する大学語学教育センターは、毎月様々なアクティビティを主催しています。留学生は、地元のレストランで開催される料理教室や港町ならではのマリンスポーツ体験、フラメンコ教室、ワイナリーの見学、泊りがけの国内旅行などに参加することができます。これらのアクティビティは、アリカンテ住民の方々に場所の提供やツアーの説明を依頼するなど、地域の協力をあおぐ内容が多いようです。コーディネーターによると、「アリカンテ大学のアクティビティは、他の大学と比べて、より地域住民との触れ合いに重きを置いている」ということです。やはりスペインに来たからには現地の人のリアルな生活を覗き見て、一緒に時間を過ごし、たくさんの思い出を作りたいですよね。私は地域のイベント参加や語学交換会などのアクティビティ通して、たくさん現地の方とお話しし、素敵な経験を得ることが出来ました。

 次の記事では私が実際に参加したアクティビティの中でも特に大きなイベント、アリカンテのお祭りについて書いていきたいと思います。お楽しみに!

※1……2019年現在は、女性スタッフの米田真由美さんがコーディネーターを担当されています。留学の手配だけでなく、記事執筆の際も快く協力してくださった米田さんに、この場を借りてお礼申し上げます。

※2ニエ……NIE (Número de Identidad de Extranjero) といい、スペインに6か月以上留学目的で滞在する場合に学生ビザに加えて必要になる身分証明書です。スペインでは学生ビザを現地で取得することは出来ないので(延長は可)、日本で事前に取得してから来なければなりませんが、実はビザだけでは3か月以上は滞在できないことになっています。そのためスペイン到着後の1か月以内に居住区の外国人局にて、このニエの申請と取得を行わなければなりません。

※3デレ……DELE (Diplomas de Español como Lengua Extranjera) とはスペイン政府が設立したインスティトゥート・セルバンテスという団体が実施する高い信頼性を持ったスペイン語の能力検定試験です。1988年にスペイン語を母国語としない人々のスペイン語能力を測るテストとして始まり、現在は世界100カ国以上で実施されています。スペイン語圏への留学や就職の際に語学力を保証するものとして認められています。

ライター:NANA

東京都八丈島出身。趣味は読書とお散歩で、旅行雑誌を読んで行った気分になるのが好き。スペインの好きなところは、一瞬一瞬を楽しむことに全力を注ぐスペイン人の生き方と、美味しい食べ物。スペインのアリカンテ大学(バレンシア州)への留学体験記を執筆中の、フラメンコを踊れるライター。

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