• Established 1984. Multilingual Communication Service Company

Vol.2 人生を楽しむスペイン人

Vol.2 人生を楽しむスペイン人

2019/10/11

 さて、スペイン人の口からよく聞くのが「ディスフルタ ラ ビダ(Disfruta la vida)」(人生を楽しむ)という言葉。そんな彼らの生活リズムは私の今までのそれとは大きく違っていました。

エクスプラナダ通り
エクスプラナダ通り(Explanada de España)

 スペイン人の1日はとても長く、一日一日を無駄なく楽しく生きているように感じます。朝は7時ごろに起床してコーヒー1杯程度の軽い朝食、それから学校や仕事に向かい11時頃にバルやカフェでブレイク、これをアルムエルソ(Almuerzo)※1といいます。そしてまた仕事に戻り、14時から17時ごろにかけてはシエスタ(Siesta)というお休みの時間。ほとんどの店は飲食店を除いて一時閉まり、休憩と食事を楽しみます。この間に一日のメインである昼食を、たっぷり時間をかけたくさん食べるのです。また、このシエスタは日本ではよく「お昼寝の時間」と解釈されていますが、実際に眠る人はほとんどいません。夏場がとても暑いスペインでは、最高気温が45度を超えることも。そのため、一番気温の上がる時間帯に休憩をはさみ、その間陽の当たらない屋内で過ごすというのがシエスタの本来の役割です。昔は仕事もいったん切り上げて家族のもとへ帰り、昼食と仮眠をとることもあったそうなのですが、現在は帰宅まですることは少ないそうです。というのも、国際社会の潮流に歩調を合わせて昼休み自体が短縮されているのだとか……。しかし、このシエスタは家族や友人と、あるいは会社や学校の同僚と、コミュニケーションをとりながら食事を楽しむ大切な時間。食べるという行為は、ここでは会話を楽しむということと常にセットなのです。私が愛するスペインの風習のひとつです。

ボカディージョとタパス
ボカディージョとタパス
タパス・バル「セント・バリオ(Sento Barrio)」にて

 17時ごろからまた仕事に戻り、学生は課題に取り組んで夜ご飯まで勉強など。夜のバルの開店時間は21時ごろからで、家庭での食事もそのくらいです。着いたばかりの頃は「遅すぎる!」と思っていましたが、日の長いスペインでは夏場の日没時間がだいたいそのくらいなのです。今では身体もスペインタイムに慣れました。そもそも昼食が遅いため、夕食が後ろ倒しになるのは当然なのかもしれません。しかし子供達はそれまで待ちきれないので、この間軽いおやつタイムのメリエンダ(Merienda)※2をとります。20時を過ぎると続々と人々が集まり始め、飲食店や通りは大賑わい。お酒とおしゃべりが目的なので、夜はあまりたくさん食べません。タパスをつまみながらみんなで盛り上がるのが、一日の締め。そして就寝は24時過ぎ頃、ディスコへ行けば若者はオールナイト。「いったいどこにそのエネルギーが秘められているのか…」と最初はうなだれましたが、しっかりと仕事もしつつ、一日を十二分に楽しむ姿はとても輝いていて、情熱の国スペインを生身で感じました。


友人宅での日西交流ランチパーティー

 また人々は聞きしにもれず陽気で明るく、知らない人でも気軽に挨拶するのはスペイン人のマナーです。必ず会話が「オラ(Hola)」(こんにちは)で始まって、「アスタ ルエゴ(Hasta luego)」(またね)で終わる。初めての人であっても両頬にキスをして挨拶※3するなど、人と人の距離が、老若男女問わずとても近く感じます。今までとは全く違う環境ですが不思議とショックはなく、新しい発見も文化もすとんと心に落ちてきます。これも、「人生を楽しむ」ことがすべての行動の基盤になっているスペインならではの雰囲気のおかげかもしれません。今日という一日を楽しんでそれが連続すれば毎日になる、明日のことは明日考えればいい、そんな考え方を持っている人たちの国だなと感じています。日本の考え方に慣れてしまって常に先のことを懸念し生き急いでしまう私には、時にその考え方が受け入れられない時もありますが、ひとつの素敵な人生の捉え方だなと感じています。

 まだ言語の壁はあるけれど、気候だけでなく人も温かいこのアリカンテでの9か月は宝物になる、と確信しています。

 

※1 アルムエルソ…朝食と昼食の間にとる間食。スペインの昼食は遅いので、間にボカディージョ(Bocadillo:スペイン風サンドイッチ)などの軽食を挟む人が多いです(写真二枚目)。

※2 メリエンダ…昼食と夕食の間にとるおやつ。主に子供がとります。たいていケーキやクッキーなどの甘いものがメインです。メリエンダをあわせると、スペイン人は1日最大5食もの食事をとることになります!

※3 両頬にキスをして挨拶…スペイン語で「ドス ベソス(Dos Besos)」といいます。人に会った時と別れる時の挨拶です。男女関係なくしますが、初めて会う人の場合や異性間なら握手のみで済ませる人もいます。キスといっても、実際は頬を合わせて「チュッ」という音を出すのみなのでご心配なく。

ライター:NANA

東京都八丈島出身。趣味は読書とお散歩で、旅行雑誌を読んで行った気分になるのが好き。スペインの好きなところは、一瞬一瞬を楽しむことに全力を注ぐスペイン人の生き方と、美味しい食べ物。スペインのアリカンテ大学(バレンシア州)への留学体験記を執筆中の、フラメンコを踊れるライター。

観光、文化に関する和文・英文ライティング(記事執筆)、多言語翻訳を随時受け付けております。
お問い合わせはこちら

※当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。